2.労働基準監督署の監督指導事例
労働基準監督署では、監督指導の対象となった企業に対して、定期的にタイムカードの打刻時刻やパソコンのログ記録と実働時間との隔たりがないか確認するなど、賃金不払残業をなくすための様々な取組みを行っています。以下では、その監督指導事例を一つとり上げます。
【賃金不払残業の状況】
- インターネット上の求人情報等の監視情報を受けて、立入調査を実施。
- 会社は、自己申告(労働者が始業・終業時刻をパソコンに入力)により労働時間を管理していたが、自己申告の記録とパソコンのログ記録や入退室記録とのかい離が認められ、また、月末になると一定の時間を超えないよう残業を申告しない状況がうかがわれるなど、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。
【企業が実施した解消策】
- 会社は、パソコンのログ記録や入退室記録などを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払いとなっていた割増賃金を支払った。
- 賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。
(1)会社幹部が出席する会議において、自己申告制の適正な運用について、実際に労働時間を管理する者に説明を行うとともに、その管理者を通じて全労働者に周知した。
(2)自己申告とパソコンのログ記録のかい離を自動的に確認できる勤怠管理システムを新たに導入し、月2回、必要な補正を行うようにした。
(3)労務管理についての課題と改善策を話し合う労使委員会を年2回開催することとした。
働き方改革関連法が成立し、2019年4月には労働安全衛生法の省令改正により、原則すべての労働者を対象に労働時間の客観的把握が義務化されます。そのため、労働時間の把握において、定期的にタイムカードの打刻時刻やパソコンのログ記録と実働時間との隔たりがないか、企業で自主的に点検するなどの取組みが重要になってきます。